羊 その3
やっと「羊をめぐる冒険」の話。
言わずもがな、ですが、野間文芸新人賞に相応しい作品です。
初めて読んだ時、物語の持つ力の大きさに感動、2度目は自然と涙が……。
さすがに3度目は泣かんだろう、と安心して読み始めたものの、結果、2度目よりも涙。
自分が歳を重ねて、感じ方や考え方に変化が生じたのか。(よく、こう言いますよね。歳によって捉え方が違う、とか。)
あるいは「変わらないもの」がそこにあったからなのか。
この作品はファンタジー作品だと思うのですが、でも、虚構の中に、現実の孤独と悲しみ(哀しみ)が 存在して、こちら側を静かに見つめている……という感じでしょうか。
何の気なしに隠れんぼの鬼探しをしていたら、思ってもいなかったものを見つけてしまった、というか……。
こんな短い文で表現できる訳がない。当たり前ですね。
でも、ぜひ、多くの人に読んでもらいたい。
できれば、その前々作「風の歌を聴け」と前作「1973年のピンボール」を読んでからが望ましいのも、言わずもがな、です。